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空よりも遠く

雲の隙間から覗く青空を見ていた。
胸が締め付けられる程、青い、青い色。
ドクドクと自分の鼓動がうるさいほど聞こえる。
指先が冷えていた。
喉が乾いていた。
…何だかとても、泣きたかった。

-次期女王の決定-
簡潔にまとめられた文章。見慣れた同僚の文字。
そして記載されていた、彼女の名前…。
それらを小さく折り畳んで、手のひらで包みこむ。
今はまだ、そのことを忘れていたかった。

「ルヴァ様!こんにちは」
いつもと同じ彼女の明るい声。でも、思うのはいつもと別のこと。
「ルヴァ様?どうしたんですか?」
心配げな彼女の瞳ぶつかり、慌てて何でもないと笑ってみせる。
このままでいたかった。ずっとこんな毎日が続くと思いたかった。
ぎゅっと握りしめた手のひらには折り畳まれた小さな紙。
そこから身が凍っていくかのようだ。
手折ってしまえ、と自分の中でそんな声が聞こえる。
何も知らずに隣で微笑む彼女は、次期女王で、空よりも遠い存在になるべき人。
内なる声。それは私の望むこと。
それはあまりにも身勝手なこと。
わかっている。わかってはいるのだけど。
でも。

「アンジェリーク、私はあなたの事を…」